多様な環境・条件下で酸素濃度測定できる小型・固体・電気化学センサの開発が望まれている。本研究では、超イオン導電体を用いた、電流検出型センサ(Ag|Ag_4I_6WO_4|PbSnF_4・絶縁体混合物|混合検知極層)を試作し、応答特性に及ぼす検知極(SE)および電解質層成分の影響および高速応答化の機構について検討した。1)PbSnF_4・絶縁体混合層の影響 絶縁体(酸化物、ポリマー、フタロシアニン:Pc)量の増加と伴に短絡電流Iscが減少したが、応答時間t_<90>は1/2-1/10に短縮された。PbSnF_4・絶縁体混合層とSEの二層は混合してSEの一層にしても、同様の効果が得られた。2)応答機構におけるFePcの役割FePcを混合した全てのSEを用いた場合、酸素分圧の1/2乗に依存したIscが得られ、FePcは前述の役割に加え、二電子還元解離反応触媒の役割も果たすことが判明した。3)応答特性に及ぼす電子導電性材料(EC)の影響SE層に各種ECを混合したが、応答特性はECの化学的性質や殆どの物理的性質に依存しないことが判明した。例外的に、ある種のウィスカ-材料を混合した場合、常温作動固体酸素センサー中での最速応答(25秒)が実現された。4)高速応答の機構(1)アスペクト比(約5から20)(2)平滑な表面(3)高導電性(4)長径が数十ミクロンの条件を満足するEC粒子は、検知極中に導電性の網目組織を隈無く形成する。酸素はこの表面に沿って拡散し、電子も網目を通して、容易に供給される。この状況下では、網目の周囲に局在する還元サイトとなる三相界面は、電気的および物理的に速やかに均一化されるため、応答が高速化したと考えられる。5)現状と将来の課題 現在、数kPa-10MPaの広い作動圧範囲および-5℃まで使用可能である。t_<90>は、15秒まで短縮され、実用レベルに達した。CO_2は、分圧500kPaまでは妨害しないが、湿度は誤差を生む。実用化に向けて、この克服と安定性、再現性の長期経時評価が必要である。確立したSEの設計思想は、CO_2センサ等の高速応答化や低温作動化に有用な手法を提供する。
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