研究概要 |
本研究は、筆者らが開発した準安定結晶からなる透明なテルライト系ガラスセラミックスをさらに発展させ、全く新しい非線形光学材料を開発することである。得られた研究成果は以下の通りである。 1.様々な組成を有するR_2O-Nb_2O_5-TeO_2系テルライトガラス(R_2O:Li_2O,Na_2O,K_2O,組成例:15K_2O-15Nb_2O_5-7OTeO_2)の結晶化挙動を明らかにした。これらのガラス系はいずれも熱処理により立方晶の基本構造に帰属できる準安定相が初相として生成し、準安定相からなるガラスセラミックスは光学的に可視領域で極めて透明であった。準安定相の個々の結晶粒の粒径は約20nmであった。準安定相の化学組成はK_2(Nb1/3Te2/3)O4.8であり、酸素欠損型の蛍石型構造に対応する。透明なガラスセラミックスの密度、屈折率および誘電率などの基礎物性を明らかにした。 2.作製した透明なガラスセラミックスにNd:YAGレーザーの基本波(波長:1064nm)を照射し、第二高調波発生(SHG)を調べたところ、Li_2O,Na_2Oを含む系からはSHGは観測されず、K_2Oを含む系のみからかなり強いSHGが観測された。SHGの原因は準安定相の構造が立方晶より非常にわずかにひずんでいることと酸素欠陥が存在するためと結論された。また、透明なガラスセラミックスは元のガラスと比べてかなり大きい三次の非線形感受率の値を示した。 3.本研究で得られた透明なガラスセラミックスでは、個々の結晶粒の分極方向がランダムになっている。高電場中で熱処理して分極方向を一方向に揃えることができるならば、さらに大きな第二および第三高調波の発生が期待できることを提案する。
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