研究概要 |
ホスト結晶として層電荷の異なるNa型テニオライト系フッ素雲母またはNa型フッ素四ケイ素雲母(Na-TSM)を選定し,異なる条件下で調製した各種多核ヒドロキソ錯イオン水溶液を用いて複合体生成反応を行うことにより,ピラ-密度および細孔特性を制御した高耐熱性のアルミナ架橋,クロミア架橋及びチタニア架橋フッ素雲母の創製を試みた結果,次のことが明らかになった。 1)従来検討されていない高重合度の多核ヒドロキソAlイオンによる層間挿入反応により,最高の耐熱性とAl収容量を持つ特異な新規アルミナナノコンポジットが得られた。 2)アルミナ架橋フッ素雲母焼結体及びアルミナ架橋フッ素雲母-γアルミナ系複合焼結体が調製できた。 3)ホスト結晶の層電荷により層間挿入反応時に多核ヒドロキソ錯イオンのイオン交換選択性が生じ,層電荷が小さい場合の方が層間物質の平均加水分解度は高くなった。 4)反応条件と層間物質の平均加水分解度との関係を明らかにした。 5)層間挿入反応を80℃以上で行うと,より多量のかさ高いクロム(III)イオン種を雲母の層間域に挿入させることができた. 6)チタニア架橋フッ素雲母の最適生成条件は,用いる塩酸濃度が1mol/dm^3で[HCl/(C_3H_7O)_4Ti]比が4のチタニアゾルを調製し,50℃で180分間反応させることであった. 7)ホスト雲母の層間イオン種が異なると,得られるチタニア架橋体のチタニア収容量,比表面積値および底面間隔値は著しく相違し,K_x-Ti系<Na_x-Ti系<Li_x-Ti系の序列が認められた. 8)Na_x-Ti系では,層電荷で規定されるイオン交換容量と膨潤性のかねあいに起因して膨潤性の変化する層電荷(x=0.6)近傍でチタニア含有量の極大が現れた. 9)チタニア架橋フッ素雲母の耐熱性はチタニア収容量に依存した. 10)Li_x-Ti系では高温で加熱処理すると層間域から一部のチタニアが掃き出され,アナターゼとして結晶表面上に析出した.
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