研究概要 |
本研究では,XTi(O-i-Pr)_3(X=O-i-Pr,Cl)と2当量のi-PrMgClより発生する二価チタン等価体(η^2-propene)Ti(O-i-Pr)_2を利用する合成反応の開発の一つとして,不飽和結合を有するエステル類との反応がTi-不飽和錯体を経由する分子内求核アシル置換反応として進行し環状カルボルニル化合物を与えることを見出し,この反応を利用する各種環状カルボニル化合物を合成するものである。即ち,3-および4-アルキニルカーボナ-トよりα-アルキリデン環状ラクトンが,3-および4-アルケルニルカーボナ-トよりα-アルキル環状ラクトンが,また4-および5-アルキニルカルボン酸エステルよりα-アルキリデン環状ケトンがそれぞれ収率良く得られた。さらに,置換基を有する基質,特に多環性の生成物を与えるものへの適用を行った結果,クマロン類などの6-6および6-5ビシクロ環の構築に適用でき,また酸素などのヘテロ原子を有する環構築にも適用でき,種々の環状カルボニル化合物の合成に有用であることがわかった。(2)については時間の都合もありよい結果は無くさらに現在検討中である。本反応は,(1)従来ほとんど例の無い分子内求核アシル置換反応を効率よく達成している点,(2)合成上有用な環状カルボニル化合物の全く新規な合成法を提供した点,(3)生成物は加水分解前には有機チタン化合物でありこの反応性を利用するさらなる展開を行える点で学術的に意義が深いと思われ,また(4)安価で毒性の無い試薬を用い,(5)操作も簡便であることから高い実用的も持っている。
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