研究概要 |
1.メタクリル酸t-ブチルとイタコン酸ジメチルからそれぞれ分子内に五員環ラクトンを含む重縮合用と開環重付加用のモノマーを調製し、脂肪族、芳香族の各種ジアミン、ジオールを求核試剤とする重合反応を行った。その結果、主鎖に五員環ラクトンを有するポリアミド、ポリエステル、ポリアミド酸及びポリイミドが合成でき、その際、脂肪族一級ジアミンを用いると、ラクトン部位が部分的に開環したポリアミドが得られた。 2.各種ジアミン、ジオールの代わりに対応する二当量のモノアミン、モノオールを求核試剤に用いて重合のモデル反応を行った。その結果、ポリマーに類似の構造を有するジアミド及びジエステル型のモデル化合物が合成でき、特に脂肪族一級モノアミンを用いると、閉環体と共に開環体が生成することを確認した。 上記で得た閉環体または開環体のジアミド、ジエステルを基質に用いて、そのラクトン部位の開環-閉環挙動に及ぼす内的因子(基質構造)と外的因子(溶媒・温度・ph・酵素)の影響をFT-NMRで追跡した。 その結果、ラクトン部位の開環、閉環反応が諸因子の選択により促進または制御できる可逆反応であること、またNMR測定用溶媒(DMSO-d_6,CD_3OD)の中で基質の開環率は概ね50%に収束する傾向を示し、最終的に平衡に達することがわかった。しかしながら、酵素による影響をリン酸緩衝液中で調べた際、その開環率は酵素の有無によらず100%を示し、大過剰の水の存在下でラクトン部位は完全に開環することがわかった。 4.幾つかの縮合系ポリマーに対して酵素による加水分解試験を行った。その結果、一週間の浸漬によりp-キシリレンジアミン及び1,3-プロパンジアミン由来のポリアミドは酵素の有無によらずラクトン部位の開環率の緩やかな増加と主鎖の切断による分子量の低下が確認できた。
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