研究概要 |
ポリアスパルテート-〔-NH-CH-(CH_2C(O)OR)CO-〕-は、側鎖Rの構造に依存して右巻き、または、左巻きのらせんをとることが知られている。我々は、最近、ポリ(β-フェネチル L-アスパルテート)(PPLA)がテトラクロロエタン(TCE)の希薄溶液及び液晶状態中で温度の昇降により、α-ヘリックスの右巻き【tautomer】左巻きの鋭い一次転移を示すことを見い出した。更に我々は、研究過程において、PPLAが微量の変性溶媒を含む溶液系で、温度の昇降により、左巻きから右巻き状態を経て左巻きα-ヘリックスに戻るというリエントラント・ヘリックス-ヘリックス転移を示すことを新たに見い出した。本研究では、ポリアスパルテートに見られる特異的なリエントラント・ヘリックス-ヘリックス転移現象に着目し、その転移機構をNMR測定と分子動力学シミュレーションを併用することにより検討した。研究の第一段階として,クロロホルム及びTCEとトリフルオロ酢酸(TFA)またはジクロロ酢酸の各種混合溶媒系について,^1HNMRのNH化学シフト値からエトントラント・ヘリックス-ヘリックス転移を確認した。また,DMSO単独溶媒でも転移現象がみられた。液晶状態については、^2HNMR測定を行い,側鎖β位の四極子分裂幅の変化によりリエントラント現象を確認した。更に,PPLA濃度とTFA濃度に対してNMR測定と偏光顕微鏡観察により相図を作成し,マクロな等方一異方相転移とヘリックス-ヘリックス転移の位置づけを明確にした。液晶状態で側鎖^2HNMR/回転異性状態解析を行った結果,低温左巻きの側鎖コンホメーションは高温左巻きの時と非常に類似しており,側鎖コンホメーションが変性溶媒の影響を強く受けていることが分かった。これまでの研究成果は,既に第4回PPCにおいて発表した。
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