研究概要 |
本研究は、ポリマーアロイと総称されるポリマーブレンドやブロック共重合体などの高分子多成分多相系の相溶性や相図に及ぼす圧力の効果とその成分高分子の分子構造との関係を明らかにすることを目的とする。日本原子力研究所東海研究所の研究用原子炉JRR-3M(出力20MW)に備え付けられた東大物性研附属の中性子小角散乱装置SANS-Uを用い、これに平成7年度に作製したサファイア製ウインドを持つ高圧試料セルを装備し、重水素化ポリブタジエン-ポリイソプレンジブロックコポリマー(DPB-HPI)について、小角中性子散乱(SANS)実験を行なった。散乱実験に先立ちマイクロストラクチャーの異る2種類のDPB-HPIをリビングアニオン重合法により合成した。これらの試料について常圧でSANSにより相溶性の温度依存性を測定したところ、1,4付加で重合した試料Aは高温側で相溶性が低下するLCST型の挙動を、1,2付加(ビニル型)で重合した試料Bは低温側で相溶性が低下するUCST型の挙動を示した。1,4付加型の試料Aは圧力の増加とともにSANS強度が減少し、相溶性の増加が見られた。2次ピークの出現する温度から判定した秩序-無秩序転移温度T_<ODT>は800気圧の圧力下では常圧の場合より約35℃も上昇した。これとは対照的に、ビニル型の試料Bは圧力依存性をほとんど示さないことがわかった。これらの結果はまた、Hajdukらによって報告されているUCST型のポリスチレン-ポリイソプレンジブロック共重合体のT_<ODT>が圧力に対しほぼ直線的に増加(相溶性が減少)するのと対照的である。これらの結果から、高分子の相溶性は混合による自由体積変化に依存するが、自由体積の圧力依存性が分子構造に大きく依存するため、分子構造により相溶性の圧力依存性が大きく異なるものと考えられる。
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