研究概要 |
本研究では膜電位の振動する最適な条件の修飾ポリアミノ酸膜を調製し、最大振動する最適条件を模索した。さらに、膜電位振動スペクトルをフーリエ解析してパワースペクトルを求め、用いた塩の種類による固有なパワースペクトル波形を模索し、塩の分子認識も試みた。以下に具体的な研究経過を示す。 1.表面修飾膜の調製とキャラクタリゼーション ポリ(γ-メチル-L-グルタマート),PMLG,を再沈精製し,キャスト法によりPMLG膜を製膜した。PMLG膜を種々のジアミン中に浸漬させ、アミノリシス反応によるジアミン化ポリアミノ酸膜を調製し、ジアミン化置換率を元素分析法により決定した。膜断面を切断し、X線分析により厚さ方向におけるジアミン化置換率を解析した所、薄い表面修飾ポリアミノ酸膜では、断面方向に均一に反応が進行していることが明らかとなった。 2.膜電位測定装置並びに解析プログラムの作成と表面修飾膜の膜電位測定 二室型透析セルを用いた膜電位測定装置を組み立て、高感度電位測定装置からの出力をRS232Cによりデータステーションに読み込み解析するプログラム(高速フーリエ変換によるパワースペクトルへの変換)を作成した。ヘキサジアミン化PMLG膜では、顕著な膜電位の振動現象(振幅10mV以上)が観察された。特にpHが高ければ高いほど膜電位振動の振幅は大きかった。 3.非線形膜電位振動からの塩分子認識 ヘキサメチレンジアミン化PMLG膜を用いて、種々の電解質に対する膜電位の経時変化を測定した所、膜電位の振幅の大きさは、以下の順であった:CsCl=KCl≪Na_2CO_3<NaNO_3=NaCl=Na_2SO_4≪LiCl。以上より本研究ではアニオンより、カチオンの影響をより大きく受け、カチオンのイオン半径が小さい(水和半径が大きい)ほど膜電位の振動振幅は大きく観察されることがわかった。
|