研究概要 |
ラム加速機の作動における有限化学反応速度と推進性能について,数値解析と小口径ラム加速機の作動実験を通じて,知見を得た.燃焼領域が亜音速となる作動は,熱閉塞モードと遷デトネーションモードに大別され,本研究では有限速度化学反応を考慮した準定常一次元数値解析によってその流れ場を定量解析するコードを開発した.方程式系は,常微分方程式に帰着しその解法は既にほぼ完成されているが,本研究では,音速点での特異性による計算の安定性低下を防ぐため,微小検査体積に対する保存則を空間的に順次解き進める手法を開発し,プロジェクタイル上あるいはその下流での閉塞状態を高解像度で解析することができた.解析結果より,化学反応の誘起距離とプロジェクタイルの長さを比較することにより,同一の混合気,プロジェクタイル速度であっても,大型の装置では遷デトネーションモードが現れ易いことを明らかにし,安定した熱閉塞モードの作動を得るためには装置を小型化した方が有利であることを示した.また,大型装置の作動では混合気の充填圧などを操作することにより,作動の安定化が図れるという方向性も示した.この数値解析の結果を背景に,口径25mmという現在世界的にも最小口径のラム加速機を用いて作動実験を行い,大型装置に比べて発熱量の高い混合気を用いたラム加速の作動を実現し,その方向付けが妥当であることを実証した.本研究成果は,ラム加速機の作動に関する相似則を得るため装置寸法と化学反応の代表寸法を比較することが有効であることを示唆し,今後の更に精緻な定量解析の足掛かりとなるものと期待できる.
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