研究概要 |
海洋や地下など,過酷な腐食環境に設置される鋼構造物の超長寿命を実現するために,電気防食は益々注目されている。防食電場解析技術が実用化され,それに基づく電気防食システムの最適設計,さらに防食状況の予測・監視・診断を目的とした電位モニタリング技術に関する研究が盛んに行われている。 一方,直流電気鉄道近傍の地下配管や,電気防食下の構造物群に対しては,干渉電場による迷走電流腐食現象を定量的に評価し,さらにそれを防止するための防食設計手法を確立する必要がある。これを目的として,本研究を行った。研究結果の要約は以下の通りである。 1.複数電場間の干渉効果に応じて,電子導体領域とイオン導体領域,およびそれらの隣接環境に生ずる界面電気2重層を,全て含めた電場解析方法を開発した。この電場解析技術を用いて,干渉による迷走電流腐食の定量的予測が可能になり,さらにそれを防止するための最適防食設計が可能になった。 2.船体や海洋構造物の接水面での海洋生物付着による汚損を防止するあために,導電塗膜を利用した,海水の電気分解による海洋生物付着防止技術が開発・実用化されつつある。経済的で,しかも完全に防汚出来る電極配置,供給電流量,および導電塗膜厚さ分布などに対する最適設計技術の確立を目的として,海水の電気分解による防汚システムに対する電場解析方法を開発した。 上記1.の干渉電場解析と,2.の導電塗膜を利用する防汚システムの電場解析との相似点は,電子導体領域とイオン導体領域との隣接境界に生ずる界面電気2重層を,外部分極特性によって取り扱うことである。
|