研究概要 |
AEの規模別頻度分布は,自然地震と同様に,べき乗則にしたがうことがよく知られている.しかしながら,従来の研究で使用されたAEの観測装置のダイナミックレンジはせまく,そのほとんどは実際の波形をみることなく,特殊な回路をつかってAEイベントの統計的性質を計数していたため正確さを欠いていた.そこで本研究では,実際の波形をあますところなく観察して,AEイベントの統計的性質を調べることをめざした.このシステムではまず,広帯域(1.5kHz〜20MHz)のプリアンプをツリー状にくみあわせて,広ダイナミックレンジ(入力換算で±2mVpp〜±2Vpp)を確保している.ブリアンプの並列出力は,それぞれ独立した4チャンネルの高速(5MS/s)で高分解能(12 bit)のA/Dに入力され,デジタイズされてメモリーに転送される.こうして,つぎつぎとおこるAEイベントの波形が,長時間(2秒間)にわたって完全に記録できるようになった.つぎに,このシステムをもちいて,岩石の1軸圧縮破壊のごく直前に発生する.AE波形を観察し,従来の研究よりずっと広いダイナミックレンジで,AEイベントの振幅別頻度分布,イベントのマグニチュード(振幅)と卓越周波数との関係などを調べた結果;AEの振幅別頻度分布は,ひろいダイナミックレンジでも,べき乗則にしたがい自己相似性をもつことがあきらかになった.いっぽう,AEの最大振幅と初動の周期,最大振幅と波全体の平均周波数(周期)との関係については,自然地震で成立するような明快なスケーリング則をみいだすことはできなかった.このことは,自然地震とAEの類似性が,規模別頻度分布にかぎられることをしめしている.本研究の結果,AEに対する謎はさらに深まった感があり,AEのもつ本質的性質を解明するためのさらなる研究がのぞまれる.
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