研究概要 |
コムギで育種上重要な役割を果たしてきた矮性変異体は,GAに対する非感受性の変異体でもある.今回,GA非感受性突然変異体(Rht3)を用い、GAに対する細胞の応答についての分子的な解析を試みようとした. 今回の研究から,種子糊粉層のGA感受性は種子の発達過程の開花後40日以後に発達し,Rht3変異体では,種子発達中には発達しなかった.また,Rht3変異体の成熟種子糊粉層は,GAに対し低い反応性を示した.また,Rht3変異のGA感受性は低温吸水処理により回復することから,この変異がGA感受性の欠失型の変異ではなく,GA感受性に関わる因子が部分的に変更した変異であることが明らかになった.また,低温吸水による感受性の変更は,この因子が細胞膜に存在する可能性を示唆した. 正常なコムギ系統とRht3系統の種子糊粉層(開花後40日)のタンパクを2次元電気泳動で分析した結果,20余りのpolypeptidesに違いが見られた.この変異の中で,このRht3変異の上記の生理的結果をもとに解析すると,膜に結合していると思われるタンパクの中に1つの有力なRht3変異に関わると思われるPolypepetideを推定した. また,正常なコムギ系統とRht3系統の種子糊粉層(開花後30日)のRNAを用い,Differential display法でこの感受性に関わる因子を抽出しようとした。この変異体が遺伝子欠失型の変異でないことから,Differential display法でこの変異に関わる因子を抽出することは困難と思われたが,この分子遺伝学的方法の技術的拾得の未熟さもあって成功しなかった. 今後,Rht3変異の準同質遺伝子系を用いて,2次元電気泳動により明らかになったpolypeptideがGA感受性に関わるかどうか更に検討する必要がある.
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