研究概要 |
本研究課題では、シイタケ菌に存在するプラスミドDNAの種類の究明を目的に、国の内外から収集した野生株を含む多数の菌株を用いてプラスミドDNAの探索を進め、併せてそれらの構造等の諸性質を検討した。その結果、以下の研究成果を得ることができた。(1)野生二核菌糸体90株及び市販栽培品種21株の計111菌株から抽出した細胞の全DNAを電気泳動してプラスミドの保有の有無を分析した結果、シイタケには大きさの異なる6種類のDNAプラスミドが存在することが示された。(2)次に、これらプラスミドの相同性をサザン・ハイブリダイゼーション法で検討したところ、9.0kbあるいは11.1kbのプラスミドはそれぞれ固有の種類であり、残りの4種類については、相互に高い相同性を持つことから前二者とは別の系統類縁的に同じグループに属するプラスミドであるものの、分子長や制限酵素切断地図に違いがあるので、一応異なる種類として扱うことにした。よって、9.0,11.1,9.8,10.8,12.1及び12.3kbの6種類のプラスミドをpLE1,pLE2,pLE3A,pLE4B,pLE3CそしてpLE3Dと称し、区別した。(3)いずれのプラスミドも、制限酵素分析と電子顕微鏡観察によって線状の形態であることが確認され、さらに分子末端に蛋白質を保持することが示唆された。(4)また、どのプラスミドも交配により母性遺伝的に伝達したことから、それらは細胞核ではなく細胞質に存在すると考えられた。伝達されたプラスミドは二核菌糸体の栄養生長中も安定して維持された。しかし、二核菌糸体の有性生殖で形成された担子胞子に由来する一核菌糸でのプラスミドの維持・複製の如何は、細胞核因子に支配されることが示唆された。(5)一方、これらシイタケのプラスミドの地理的分布には、種類によって明らかな違いが認められた。このプラスミドの地理的分布の特徴から、シイタケの原産地は南太平洋熱帯アジアであると推定された。
|