研究概要 |
1995年度は窒素濃度が暗呼吸速度(Rr)に及ぼす影響を部位やエイジに着目して検討した.培地窒素濃度の上昇に伴い,水稲幼植物の窒素濃度(N%)は各部位ともに高まり,暗呼吸速度(Rr)も高くなった.RrとN%との間には,個体および各部位ともに有意な正の相関が認められた.ポット栽培した水稲個体の生育に伴うRrは,両区ともに移植直後に高く,その後漸次低下し,生殖生長期移行後ほぼ一定で推移した.RrとN%との間には個体,各部位ともに栄養生長期には両区ともそれぞれ有意な正の相関が認められたが,生殖生長期には両区ともにN%が異なってもRrはほぼ一定値をとった.以上の結果,体構成物質の合成が盛んに行われている栄養生長期には,暗呼吸速度は植物体内の窒素濃度に強く影響を受けるものの,生殖生長期移行後老化に伴いその影響は小さくなること,および外見上枯死したとみられる葉身においても吸水処理により構成物質の分解が促進されることが推察された. 1996年度は乾物生産・暗呼吸速度・生長効率の品種間差異および窒素施肥量による相違を検討した.GEは両品種ともに出穂前の区間の相違は小さいが,出穂後ではタカナリで標準施肥区45%・多施肥区40%,日本晴では無施肥区52%・標準施肥区49%・多施肥区43%となり施肥量の増加に伴い低下した.GEは高い乾物生産を示したタカナリで低く,施肥量の増加に伴い両品種ともに乾物重が増加し,GEは低下した.また,品種間及び区間の相違ともに出穂後で著しかった.すなわち,水稲は高い乾物生産を行うと,その植物体を維持するために生育後期の呼吸量が増大しGEが低下すると推察された.このことから,暗呼吸の制御による乾物生産増大の可能性は低いことが示唆された.
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