研究概要 |
食味の優れたイチゴ品種の育成を効率的に進めるための交配,選抜に関わる育種法を確立することを目的として,果実内の全糖および組成別糖に関する形質の遺伝特性,特に遺伝力,遺伝相関などを明らかにしようとした.促成栽培したF_1集団における果実内糖(スクロース,グルコースおよびフルクトース)を調査した. 1.フルクトースとグルコース含量は遺伝力が大きく,また相加的効果による分散も大きかった.スクロース含量の遺伝力は小さく,相加的効果は認められなかった.全糖の遺伝力は0.51から0.55であった. 2.全糖及び組成別糖含量と株,葉および果実に関する形質との関係を調査したところ,全糖含量およびスクロース含量は草丈,葉酸および葉面積との間に正の遺伝子型相関相が,フルクトースとグルコース含量は成熟日数との間に負の表現型相関が認められた. したがって,果実内の全糖含量は相加的(フルクトース,グルコース)と非相加的(スクロース)遺伝子効果の両者によって支配されているので,全糖含量の多い品種の育成には,まずフルクトース,グルコース含量の多い親を用いて,品種・系統間の組合せ能力に基づいて優良な交配組合せを選定し,次いで選定した組合せについて大規模に実生を育成し,個体選抜する方法が良いと考えられた.また,株の草丈,葉数,葉面積に着目して,全糖含量の多い個体を選抜できる可能性が示唆された.
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