研究概要 |
VA菌根菌は植物と共生しなければ増殖できない絶対共生菌であるため,これまで本菌の人工培養は難しいといわれてきた。しかし,筆者らはバヒアグラス根抽出物の25%メタノール溶出液を用いて,VA菌根菌の単独無菌培養を世界に先駆けて成功した。 そこで本研究では,この溶出液に含まれるVA菌根菌の生長促進物質の探索を行うとともに,現在のVA菌根歯の人工培養技術の改良を検討した。さらに,バヒアグラス根内に含まれるVA菌根菌生長促進物質と菌根形成との関係を探るための基礎的調査して,バヒアグラス根における菌根形成の季節的変化についても調査を行った。以下に,調査結果を示す。 1.バヒアグラス根抽出物の25%メタノール溶出液から,3種類のVA菌根菌生長促進物質を単離しこのうちの1種類はユ-パリティンと同定した。この物質は,これまでにVA菌根菌の生長促進に効果あると報告されているフラボノイドとは異なるものであった。他の2種類はフラボノイドとは異質のものであり,現在,化学構造を検討中である。 2.これまでに開発したVA菌根菌の人工培養を改良するために,培地条件の検討を行った。その結果VA菌根菌の培養に適する基本培地組成を作り上げた。この培地にさまさまの物質を添加し,VA菌根菌の生長に及ぽす影響を調査したところ,アルギン酸オリゴ糖,ポリアミン類,ユ-パリティンおよび未発表の物質は菌糸生長を著しく促進した。特に,未発表の物質,ユ-パリティンなどとの混合で菌糸の生長促進に対して相乗的な効果を示しただけでなく,本菌の休眠胞子の打破などにも顕著な効果を有していた。 3.バヒアグラス根における菌根感染率は8月上・中旬をピークに,6月中旬から9月上旬の期間が高く,50%以上の高感染率を示した。
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