研究概要 |
本研究では,オリゴ糖キトサンを主成分とする土壌改良剤は,イチジクとパッションフルーツにおいて,それぞれ果実形成と花芽形成を促進させることにより収量を増加させる効果のあることが明らかになった.この効果は窒素を多量に与えたときにより顕著であったが,パッションフルーツでは土壌改良剤を数年間継続して施与すると窒素施用量を減少させても花芽形成が十分に確保できることが示された.このことから,土壌改良剤による花芽分化の促進は果樹類における窒素利用効率を高めることによって起こると推察された.しかしながら,ブドウの花芽分化に対しては土壌改良剤はほとんど影響を及ぼさず,果樹の種類によってその効果が異なることが示唆された. パッションフルーツやパパイヤの実生では、土壌改良剤により根と茎の生育が促進され,クロロフィル含量が増加し,光合成が高められた.土壌改良剤はこれらの果樹の生体内において一時的にサイトカイニン様活性を増加させることも明になった.これらの結果から,土壌改良剤はサイトカイニン様活性を高めることによって,クロロフィル含量を増加させたり,光合成をより促進することにより果樹類の生育を調節していると考えられた. 土壌改良剤に含まれる成分をペ-パークロマトグラフにより分離したところ,生長を促進物質と抑制する物質の存在が確認できた.これら2つの活性物質は果樹によって作用性が異なっていたが,新梢生長,果実生長,糖の蓄積を促進させる効果を示した.このことから,土壌改良剤の作用効果には主にこの2つの物質が関与していることが示され,今後は,これらの成分の化学構造や各果樹に対する作用性を明らかにすることによって栽培への利用せいが拡大すると考えられた.
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