研究概要 |
本研究は,苦味のない高品質の‘加賀太'キュウリの栽培体系の確立を目的として,植物体の齢あるいは栄養生長の強弱と苦味果の発生との関係さらに苦味発現と窒素代謝との関係について検討した. 1.着果位置が主枝に近くなるほど苦味果が多発したことから,より若齢の植物体で発育した果実では苦味が発現すると考えた.茎,葉では上位節になるほど苦味が強く,果実では未熟の時に強く成熟すると弱くなった.草勢が旺盛になる台木を用いると,また窒素施与量が多いと苦味果が多発した.これらより,若齢の植物体で発育した果実,齢の若い茎,葉や果実では,また施肥により窒素レベルが高くなると,窒素代謝が活発となり苦味の発現が助長されるものと考えた. 2.苦味果が多発する植物体の葉,苦味のある葉及び果実では硝酸態窒素含量は低く,アミノ酸態窒素含量は高かった.窒素吸収量が多いと葉中の全窒素,硝酸態窒素およびアミノ酸態窒素含量が高くなった.苦味果が多発する生育初期あるいは定植時期が早いと,葉中の全窒素及びアミノ酸態窒素含量は高くなった.これらより,苦味果が多発する植物体の葉,苦味の強い葉や果実では,吸収された硝酸態窒素が活発に有機態の窒素に生合成されている結果,全窒素含量が同じ場合には,硝酸態窒素含量は低くなり,アミノ酸態窒素含量が高くなるが,全窒素含量が高い場合には,硝酸態窒素・アミノ酸態窒素含量が高くなると考えた. 以上をまとめると,苦味が発現する器官では,窒素代謝,特にキュウリの苦味物質,ククルビタミンCの生合成過程に関与する様々な酵素の生合成がより活発に作動する結果,ククルビタミンCが多くなり苦味の発現が助長されるものと考えた.今後は,苦味の発現と酵素・遺伝子との関係について研究を進めていく.一方,系統分離育種を行った結果,より苦味果の発生が少ない系統を選抜できたので,ここ数年のうちに,以上の結果を総合的に組合わせ,早春から苦味がなく味のよい太キュウリを生産できる栽培体系を確立する.
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