研究概要 |
作物に対するオーキシン類の耐塩性付与効果を明らかにするとともに、そのメカニズムを根系の発達と作物種子内のα-アミラーゼ活性から解析した。 1.オーキシン類の耐塩性付与効果 IAA、2,4D、MCPを処理したイネ(湛水直播)、オオムギの耐塩性(NaCl)を、茎葉部風乾重と草丈を主な指標としてガラス室内のポット試験で調査した。(1)イネ:0.01〜0.1ppmの2,4D、MCP水溶液にイネ種子(cv.コシヒカリ)を24時間浸漬することにより、茎葉乾物重は最大で20%ほどの上昇した。しかしながら、0.1ppm以上の濃度では、形態異常が観察された。(2)オオムギ:幼植物(農林61号、5葉期)に1〜10ppmのMCPを茎葉処理することにより、生育障害は明らかに軽減され、その効果は草丈で顕著であった。耐塩性は2,4D処理によっても上昇したが、阻害と促進の濃度間差が極めて小さかった。 2.耐塩性付与効果のメカニズム (1)α-アミラーゼ活性:イネ、オオムギ種子のα-アミラーゼ活性に対するIAA、2,4DおよびMCPの促進作用は認められなかった。しかしながら、マメ科植物のヤエナリでは、α-アミラーゼ活性はこれらオーキシン類により上昇し、現在、タンパク量当たり活性としての評価を行っている。(2)根系:オオムギ幼植の冠根の成長が0.1ppm以下の2,4D,MCPによって促進された。15EA06:以上のように、NaClによるイネ、オオムギの生育障害は2,4DおよびMCPの種子浸漬処理あるいは茎葉処理により軽減されることが明らかになった。これらオーキシン類の作物に対する耐塩性付与作用は、生理的な変化よりも根系の発達に大きく依存していることが示唆された。さらに、圃場条件下での試験を計画中である。
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