研究概要 |
(1)ヨモギエダシャク雌成虫の分泌するフェロモンの立体化学と雄蛾の誘引 本種は鱗翅目シャクガ科に属し、茶園などで大発生する重要害虫である。処女雌フェロモン腺抽出物のGC-MS分析により、(3Z,6Z,9Z)-nonadecatriene(トリエン)とそのcis-3,4-エポキシ体が同定されたが、今回キラルなHPLCとGCカラムを用いた分析により、その3,4-エポキシ体はラセミ混合物であることが判明した。一方、光学活性体を用いた野外試験において、本種の雄蛾はラセミ混合物より(3R,4S)-体に強く誘引された。イスラエルに分布する亜種はそのエナンチオマーに特異的に誘引されており、両種は地理的隔離に加えて性フェロモンによって生殖隔離されていることが確認された。さらに、トリエンは誘引に不必要であることが明らかになった。 (2)光学活性体を用いたランダムスクリーニング試験 キラルなHPLCカラムを用いてエポキシジエンを光学分割し、それらを誘引源として野外試験を行った。その結果、クロスジフユエダシャクなど3種のシャクガカ昆虫の新たな誘引を認めることができた。またこれまでのラセミ体を用いた試験で誘引が明らかになった種でも、カバエダシャクは(R,S)-体に、ナカウスエダシャクなど2種は(S,R)-体に強く誘引されることが明らかになった。一方、シロテンムラサキアツバの誘引には2つの光学異性体が必要であった。
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