研究概要 |
幼若ホルモン(JH)無処理のホソヘリカメムシの休眠成虫,JH処理後4時間の休眠成虫それぞれの脂肪体からmRNAを調製し,cDNAライブラリーを作成した。次にこれらのライブラリーからインサートcDNAを調製し,大過剰の無処理のインサートで少量のJH処理インサートを吸収することにより,JHにより誘導されるクローンの存在比を高めたsubtractedライブラリーを作成した。ライブラリーを休眠成虫およびJH処理成虫の脂肪体mRNAから作成した2種のcDNAプローブによりdifferential screeningした。その結果JH処理プローブとより強くハイブリダイズする多くのクローンを得た。これらのクローンをプローブとしてノーザンを行い,JH処理により誘導されるクローンを選択した。その中の数種について塩基配列の決定を行ったところ,大多数は我々が別に解析を進めている細菌感染により誘導される抗菌ペプタイド遺伝子の配列と相同であった。また,核内レセプタータイプのJHレセプターの存在を仮定したとき,それと2量体を形成し遺伝子に作用する可能性のある転写因子R×R(昆虫では一般にUltraspiracleとよばれる)のホソヘリカメムシでのクローニングを開始し,一部の配列を得た。今後はsubtractedライブラリーのdifferential screeningとともにより簡便な新しい手法,PCR-based mRNA differential display法を用いてJH1処理後のmRNA分子種の挙動をより詳細・広範囲なタイムポイントをとって検討することが必要と思われる。同時に上記のR×Rのクローニングを進めて行きたい。
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