研究概要 |
植物ウイルスの中で農作物に甚大な被害を与えているポティウイルスグループのカブモザイクウイルス(TuMV)について、ウイルスタンパク質の翻訳後修飾について検討することを目的とした。TuMVは1本鎖のRNAを持つが、その全塩基配列を決定したところ、9,833塩基で構成されていた。また開始コドン(AUG)が130-132番目に認められ、ポリタンパク質は3,164アミノ酸残基で構成されていると推測された。また既報のカナダ株(TuMV-C)の塩基配列と比較すると、ポリタンパク質から最低9種類の成熟したタンパク質(P1,HC-Pro,P3,6K1,CI,6K2,NIa,NIbおよびCP)ができると思われた。次に植物から精製困難なウイルスタンパク質についてglutathione-S-transferase (GST)等との融合タンパク質として大腸菌内で発現させ抗血清を作製した。また感染植物から細胞分画実験を行いそれらの抗血清を用いてウエスタンブロッティング法により検出すると、P1タンパク質はPe1(核および様葉緑体が豊富な分画)とPe30(ミトコンドリアおよび小胞体が豊富な粗膜分画)に、HC-Proタンパク質はPe1、Pe30、S30(細胞質基質分画)およびCW(細胞壁関連タンパク質分画)に、CIタンパク質はPe1とPe30に、NIaタンパク質はPe1、Pe30、S30、ST(残余未分解組織分画)およびCWに認められた。以上の結果からHC-Proタンパク質は細胞壁に付着している可能性があり、タバコモザイクウイルスの移行性タンパク質も細胞壁の原形質連絡糸に付着していることから、細胞間移行に関与していると思われる。さらにHC-Proタンパク質およびCPに対する抗血清を用いて感染植物体内の蓄積を検討したところ、CPに比べてHC-Proタンパク質は遅れて検出され、CPは徐々に蓄積されたのに対してHC-Proタンパク質は一度蓄積した後減少した。
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