研究概要 |
Geotrichum candidum citrus raceはカンキツ白かび病の病原菌として知られているが、わが国ではあまり研究されていない。そこで、わが国のカンキツ栽培10県のカンキツ園と非カンキツ圃場およびカンキツ非栽培地帯の北海道の圃場(合計33種の作物栽培圃場と未耕作地)の土壌446点とカンキツ白かび病斑より、選択培地を用いて本菌を分離し、各分離株のカンキツ(レモン、オレンジ、温州ミカン)に対する病原性を調べた。その結果、446試料のうち356試料からカンキツに病原性のあるcitrus race(CR)が分離され、CRは日本各地の土壌に広く分布していることが確かめられた。各分離株はレモンに対する病徴の激しさで5種の病原型に分類できた。CRは10種のカンキツ類のほか、6種の果菜・果実にも病原性が認められた。カンキツに病原性を示さない系統(noncitrus race=NCR)も多く分離され、両系統の生理学的諸性質と病理学的性質を調べ、その差異を明らかにした。両系統は形態学的にほとんど差は認められなかったが、CRはPDA培地あるいはpH2.2の滅菌レモン汁における生育が良く、Polygalacturonase活性が高く、カンキツの組織軟化力も強かった。つぎに、温州ミカンを用いて、果実塾度と収穫後の貯蔵期間における本菌の感受性を、糖類、ポリフェノール、クエン酸、水分含量などとの関連において調べ、糖類とポリフェノール含量の少ない若い果実で感受性が高いことが明らかになった。カンキツ果実の成分として知られる揮発性物質の本菌に対する影響を調べ、ヘプタノール、デカノール、ノナノール、オクタノールが1,000ppm濃度で分生子発芽および菌糸生長を阻害することを認めた。防除薬剤を検討した結果、ベフラン-25が1,000ppm濃度で本菌の生育と病斑の進展を押えた。
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