研究概要 |
コリンエステラーゼ族に保存されているN-末端近傍のペプチド配列に基づく縮重プライマーを設計し,RT-PCRとそれに引き続き3′RACE法により,ツマグロヨコバイ,Nephotettix cincticeps,の殺虫剤感受性系統よりアセチルコリンエステラーゼ(AChE)をコードするcDNA配列を得た。cDNAに基づくAChEの部分的アミノ酸配列はタンパク前駆体のC‐末端を含む507アミノ酸残基をコードし,予想される完全長前駆体の約4/5に相当した。この部分的タンパク質配列は,アラインメント窓の上で著しく可変的な領域を除外すると,コロラドハムシと3つの双翅目昆虫(キロショウジョウバエ,Anopheles stephensi,ネッタイシマカ)のものと比較して,それぞれ,80%と65‐68%の同一性を示し,また,ハイドロパシー・プロファイルは,N‐末端側の著しく親水的な20‐30アミノ酸残基が3つの双翅目昆虫が特異的に有する点を除けば,これら5種の間で非常に類似していた。電荷リレー機構の触媒三つ組みと推察される3つのアミノ酸残基(Ser,Glu,His),サブユニット内でジスルフィド結合を形成するCysは,これまで知られている種々の動物由来AChEと比較して,完全に保存されていた。これらの特徴から,増幅したcDNAは確かにツマグロヨコバイのAChEをコードしているといえた。本研究に使用した縮重プライマーセットは,また,配列未知のイエバエのAChE cDNAを増幅する際にも働き,遺伝子プローブを用いてはクローニングが困難な未知の異種昆虫のAChE cDNAの一次増幅産物を得るのに役立つ可能性がある。
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