研究概要 |
研究計画に基づき種々の要因を考慮に入れた適切な実験計画を組み,カイコの飼育実験を行った。次に,申請者らの開発した3DASBS(三次元グラフィクス営繭行動解析システム)を利用し実験データの解析を行った。さらに,データ解析に基づく行動の確率過程モデルの作成を行った。その結果,次の問題に関して多くの知見を得ることができた。 1.時間の経過に伴う吐糸領域の変化:吐糸領域に楕円体をあてはめ,行動中心からの吐糸領域の大きさを計算することで初めてこの変化を実際に測定することができた。 2.繭内部からのカイコの押し広げ行動の特性:数品種に対して押し広げ行動の回数の変化および変化の大きさを測定し,品種間の比較を行うことができた。 3.繭形形成時の蚕の体形分布およびその時間的特性:蚕繭行動時の体を三角形で表示することにより,Bookstein形状変数を用いて,この分布形状をデータより計算し,実際の分布の品種間比較を行った。その結果,天蚕が他の家蚕に比べて著しい特徴を示すことがわかった。また,各品種に対してカ-ルバックライバー情報量を計算し,品種間の相互距離を求めた。さらに,時間パラメータを導入するため,形状変数値の時系列データから自己相関係数を計算し,その特徴を抽出した。 4.体形分布の確率モデル:形状分布のモデルとして正規分布を仮定し,その妥当性を検討した。その結果,特別なものを除きほぼ正規分布で近似できることがわかり,確率過程モデル作成の基本分布の一つが同定できた。同時に特性パラメータの推定方法についても検討した。 5.吐糸方向の移動モデル:営繭中の吐糸方向変化の基本モデルとしてFisher分布およびケント分布を仮定し,吐糸方向の移動の特性をパラメータで表示する試みを行った。さらに,これらのシミュレーションについても検討を加えた。その結果,吐糸方向の移動モデルの基礎をつくることができた。
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