研究概要 |
グルタチオン(あるいはホモグルタチオン)は植物において細胞内の酸化還元状態を規定するとともに、各種のストレスに対しても重要な役割を演じているといわれている.ダイズをイオウ欠乏下で栽培してホモグルタチオン含量を低下させるとパラコートに対する感受性が増加した.植物においてもグルタチオンはγ-グルタミルシステイン合成酵素(GCS)とグルタチオン合成酵素によって生合成されるといわれている.しかし高等植物からのGCSは未だ精製されておらず,本研究ではGCSの精製と特性を明らかにすることを目的とした.GCSの活性測定法は,動物ではATPの加水分解による分解物の定量から活性を求めているが,植物ではリン酸エステル分解活性が高いためこの方法では活性測定が不可能であった.そこで活性測定法について検討し,グルタミン酸とステインを基質とし生成物のチオール基を螢光修飾してHPLCで分析定量する方法,およびグルタミン酸とα-アミノ酪酸からの生成物(標品を有機合成)をアミノ酸分析法で定量する方法を確立した.植物のGCS活性は一般に大腸菌などに比べて低いので大量のホウレンソウを用いて本酵素の精製を試みた.粗酵素液を硫安分画後、DEAE-cellulose,Phenyl-Sepharose,Hydroxyapatiteなどのカラムクロマトグラフィーで精製を試みた.しかし比活性は10倍程度上昇したが,精製中の酵素の失活が激しく,2段階のクロマトグラフィーですべての活性が失われた。種々のプロテアーゼ阻害剤,チオール保護試薬,脱酸素処理などを試みたが,酵素の失活は防ぐことはできなかった.さらにγ-グルタミルシステインをリガンドとするアフィニテイクロマトグラーフィを試みたが吸着しなかった.従って本酵素蛋白を精製するためには、安定化の因子を見いだすことが重要であると結論した.
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