研究概要 |
根粒形成抑制遺伝子(Rj遺伝子)保有ダイズ品種CNS(Rj_2Rj_3)とHill(Rj_4)ダイズ品種に親和性を異にする根粒菌株Bradyrhizobium japonicum Is-1(CNSに非親和性,Hillに親和性)とIs-34(CNSに親和性,Hillに非親和性)を接種して根粒形成の初期過程,根毛のカーリングをメチレンブルー染色で,皮層細胞分裂を光学顕微鏡観察で,根粒菌の侵入を蛍光標識抗体を用いて調査したところ,非親和性菌株に対する抑制機構は3〜5日目に根粒菌の侵入段階で働いていると推察した. そこで,親和性決定因子として,ダイズ根中のイソフラボノイド類の組成およびダイズ根抽出物で誘導される根粒菌の代謝産物に着目し,親和性決定に関与するシグナル分子の検索を試みた.ダイズ根中のdaidzein,glyceollim I含量をHPLCにより分析したところ,接種菌株,ダイズ品種に関係なく根中の含量は7日まで低く推移した.CNSとHillの根(3日および5日栽培)では,ダイズ根粒菌のnod遺伝子の発現を誘導する主要なイソフラボノイドであるるgenisteinとdaidzeinの含量に差はほとんどみられなかった.しかし,Hillの根抽出物にはCNSにはみられない蛍光を示す特異的なスポットが確認された.Is-1とIs-34にイソフラボノイド類,ダイズ根抽出物あるいはHillの根に特異的な蛍光物質を,トレーサーとしての^<14>C-酢酸塩とともに供与して培養し,^<14>Cでラベルされた代謝産物の分離パターンを分析したところ,各処理により大きな違いはみられなかったが,Is-1とIs-34で検出されるスポットの数および強度が異なっており,キチナーゼ処理で強度が減少するスポットがみられ,Nod factorの存在が明らかとなった.これらの結果から,代謝産物の組成が菌株によって異なり,その根粒菌代謝産物に対する宿主ダイズの応答が異なることによって親和性が決定される可能性を示唆した.
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