研究概要 |
糸状菌A. aculeatus由来のセルラーゼおよび細菌B. pumilus由来のキシラナーゼは進化的にも遠く、両酵素蛋白質間の一次構造上の相同性は低い。しかしながら、それらの立体構造は非常に高い類似性を示す。そこで不溶性糖質加水分解酵素の構造と機能を解析するため、両酵素間のキメラ酵素蛋白質を遺伝子操作技術を用いて作製し、得られたキメラ酵素の立体構造と活性発現の関係に関する基礎的知見を検討することを最終目的としている。平成7年度においては、キメラ酵素の構築とそれらの高発現系について中心的に検討した。平成8年度においては引き続きこれらの精製と性質について検討した。 両酵素とも2枚のβ-シートの間にはさまれたクレフトと考えられる領域に活性部位が存在し触媒活性を直接担っていると考えられている。両酵素のα,β領域とβ,β領域を連結するヒンジ部分でそれぞれの領域が分断できる構造のため、キメラ酵素構築のためには両酵素分子のβ,β-領域とα,β-領域とを分断し両者をそれぞれ交換した形で構築した。セルラーゼ[C]およびキシラナゼ[X]の両構造遺伝子上においては、キメラ-1は[X-C-X]、キメラ-2は[C-X-C]となるように各遺伝子の読み取り枠を保存して連結した構造になっている。両キメラ遺伝子を各々保持する各形質転換株の全蛋白質をSDS-PAGEで分析したところ、予想された分子量に相当する蛋白質バンドの存在が確認された。さらに、これら蛋白質は両酵素に対する抗血清と反応することがウェスタンブロッティングにより確認されたことから、両キメラ蛋白質の発現していることが確認された。キメラタンパク質を精製するために、LB培地を用いて培養した後、集菌後菌体を超音波処理にて破砕後、除核酸、硫安沈殿の後、透析し各種カラムクロマトにより抗原・抗体反応を指標にして精製を行った。精製したキメラ酵素蛋白質は電気泳動的に単一であった。アグリコンとして4-メチルウンベルフェリル(4-MU)を持った市販の蛍光基質に対する酵素活性を調べたところ、セロビオース、セロトリオース、キシロースの基質に対しては活性は検出限界以下であった。
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