我々はAlcaligenes faecalisS-6株において、脱窒の一過程である亜硝酸還元を担う銅含有亜硝酸還元酵素(NIR)及び同酵素への直接の電子伝達物質として同菌より単離された青色銅蛋白質シュードアズリン(PA)の間の電子伝達機構についての解析を行ってきた。我々は、両銅蛋白質間の電子伝達機構を解明するための基礎となる両蛋白質間の相互作用様式を解明するために、PA分子表面に存在するリジン残基の改変体を作製し、それらのNIRに対する親和性を調べることによって、PAが自身の銅原子近傍に存在するリジン残基を介してNIRと相互作用することを明らかにしてきた。そこで、本研究ではNIRの分子表面にある種々の酸性残基を改変し、PAとの相互作用の変化を調べることとした。これまでの我々の研究により、NIRに含まれる2種類の銅原子のうちタイプ1銅がPAから電子を受け取り、タイプ2銅へ電子を受け渡すことが明らかとなっているが、その結果と一致するように、タイプ1銅近傍に存在する酸性アミノ酸残基の改変により、PAとの相互作用が低下することが明らかとなった。これらの結果は、両銅蛋白質の相互作用には静電的相互作用が関与することを示唆している。そこで、様々な組み合わせで各改変体間の電子伝達を調べた結果、NIRのE197とPAのK10間、NIRのGlu118とPAのK57/K77間に相互作用が存在していることが明らかとなった。
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