研究概要 |
好熱性方線菌Thermoactinomyces vulgaris R-47の生産する2種類のα‐アミラーゼTVAI,TVAIIは共に澱粉やプルランの高分子基質を分解するが、TVAIは澱粉やプルランなどの高分子基質を好み、TVAIIはオリゴ糖など低分子基質を好むなど基質特異性が異なっている。ネオプルラナーゼと共にこれらのプルラン分解性アミラーゼは一つのファミリーをなしている。TVAI,TVAIIの基質特異性の決定機構を探るため、これら3種のプルラン分解アミラーゼの1次構造を詳細に比較することにより相同領域以外の基質特異性にかかわるアミノ酸残基の候補として、特にタカアミラーゼなどのプルランを分解しないアミラーゼと比較して相同性が低くかつサブサイト近傍のループ上に位置する領域を2カ所見いだすことができた。一つはTVAIIの287-292の部分でタカアミラーゼのD168の近傍に相当する。TVAIIのこの8残基をTVAIの配列に変えた変異酵素AB76は非活性が1/100以下に低下したが、プルランに対するKm値は変化しなかった。マルトトリオースなどの低分子基質に対するKm値はTVAIに近くなり、この部分が低分子基質に対する特異性を決定していると考えられる。もう一つはTVAIIの194-207の部分でタカアミラーゼのY75,W83の部分に相当する。この部分はプルラン分解性アミラーゼではよく保存されているためプルランの認識に関していると推測した。種々の変異酵素を調製した内、TVAIIのH202Nは比活性は1/100以下に低下したが、低分子基質に対するKm値はほとんど変化しなかったのにプルランに対するKm値は非常に大きくなった。予想通りこの部分がプルランの認識に関係していることが明らかになった。しかし、いずれの変異酵素も大きく活性が低下しており今後その原因を明らかにする必要がある。
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