研究概要 |
担子菌の子実体(きのこ)形成は真核微生物における形態分化の代表的なものであるが、シイタケにおいてras遺伝子に隣接し、成熟子実体(mature fruiting body)中で高程度に、未成熟子実体中でも中程度発現している遺伝子の存在がわかりmfbAと命名した。mfbAの遺伝子産物MFBA(分子量234,494)は分子内に動物の細胞接着因子に見られる接着・伸展促進配列Arg-Gly-Asp(RGD)を持つことが明らかになっていた。本研究では、MFBA蛋白質が実際に動物細胞や酵母細胞に対して接着・進展活性を示すことを明らかにした上で、担子菌の子実体形成においてどのように機能をするかを解明することを目的とした。その結果、大腸菌内で生産させたRGDを含む425アミノ酸からなるMFBA断片[MFBA(582-1006)ペプチドと命名]は、RGD関与のもとに(1)マウス黒色腫細胞やヒト繊維芽細胞に対し接着・伸展活性を示すこと,(2)出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeをin vivoで顕著に凝集させること,(3)担子菌の菌糸細胞をin vitroで顕著に凝集させることがわかった。また子実体におけるmfbA遺伝子の転写産物の分布およびMFBA蛋白質の構造的特徴を詳細に解析したところ、(4)転写産物が子実体のひだ(担子胞子の形成場所)を除く傘および柄において認められ,(5)MFBAはRGD配列(アミノ酸番号812-814)のC末端側に高度疎水性領域(アミノ酸番号865-920)を有することがわかった。 以上の新知見およびこれまでの研究結果から、MFBA蛋白質は高度疎水性領域を介して担子菌細胞の細胞壁に入り込み、RGDを含む領域が他の細胞表層のレセプターと結合することにより多数の担子菌細胞を凝集・伸展させ、子実体の形作りや成長において機能していると考えられるとの結論に至った。現在投稿中の2つの論文を参考として以下に示す。 1)Toru Yasuda and Kazuo Shishido : Aggregation of yeast cells induced by the Arg-Gly-Asp motif-containing fragment of high-molecular-weight cell-adhesion protein MFBA derived from the basidiomycetous mushroom Lentinus edodes. 2)Toru Yasuda,Hiroki Ishihara,Hitoshi Amano and Kazuo Shishido : Generation of basidiomycetous hyphal cell-aggregates by addition of the Arg-Gly-Asp motif-containing fragment of high-molecular-weight cell-adhesion protein MFBA derived from the basidiomycete Lentinus edodes.
|