研究概要 |
1)花の香気成分前駆体の精査:独自に開発した粗酵素試験法を用いてこれまでにクチナシ、マツリカから単離構造決定してきたアルコール系香気成分の二糖配糖体に加え,さらにマツリカから2-phenylethyl β-primeveroside、β-rutinoside、benzyl β-primeverosideを新たに単離同定した。また香料用バラであるブルガリアンローズからもモノテルペンアルコールの種々の二糖配糖体を単離構造決定し、バラから初めて香気前駆体としての二糖配糖体の存在を明らかにした。 2)蛍光基質の合成:花の香気生成酵素の活性は極めて低いため高感度の酵素活性検出用蛍光基質の合成を試み、4-methylumbelliferoneの3種の二糖配糖体の化学合成に成功した。 3)香気生成酵素の精製単離:一方マツリカ、クチナシの開花直後の花から調製したアセトンパウダーの可溶化、カラムクロマトグラフィー等による部分的精製の結果、香気生成に関わる酵素はいずれもグリコシダーゼであること、本酵素は少なくとも3種類存在することを見いだした。これらの酵素のうちクチナシ由来のprimeverosidaseをFPLC後単一ピークにまで精製することに成功した。 4)香気生成酵素の生花学的特性の検討:上記primeverosidaseは2糖配糖体であるpNP-primeverosideをアグリコンとのグリコシド結合のみを加水分解して香気成分へと変換することも明らかにできた。 5)開花に伴う香気前駆体の消長の検討:クチナシ,バラの蕾の発達、開花に伴う香気発散、香気前駆体の蓄積、香気生成加水分解酵素活性の変化を香りセンサー、電子レンジ抽出法などを組み合わせた新技術を用いて検討し、開花と香気生成・発散に関する基礎的知見を得た。一方香気前駆体をトリフルオロアセチル化後,GC-MSによって直接定量を試みたが再現性と感度に劣ることが判明し,これ以上の検討はしないことにした。 開花に伴う香気生成機構を分子レベルで解明する上で上記の知見は極めて重要であり,香気生成酵素の単離と構造決定、その遺伝子の解明と遺伝子発現研究が今後の課題である。
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