研究概要 |
さまざまな置換ジベンソイルヒドラジン類を合成し,それらの脱皮ホルモン様活性をニカメイチョウ培養表皮系を用いて測定した.構造を脱皮ホルモン様活性との関係をHansch-Fujita法を用いて定量的に解析した結果,分子全体の疎水性が高いほど,A-環部(t-Bu基に近いほうのベンゼン環)に電子供与性基が導入されると活性は高くなることがわかった.また,嵩高い置換基のベンゼン環へ導入は活性にとって好ましくないことも明らかになった.エクダイソン類とジベンソイルヒドラジン類はそれらの平面構造的には異なるが,立体構造的に類似性の高いことがわかった.そこで,3次元定量的構造活性相関解析の一つの手法であるCoMFAを用いて解析を行ったところ,一方のベンゼン環がエクダイソン類のアルキル側鎖に対応している可能性が唆された,さらに,合成研究からも,t-butyl基から遠いほうのベンゼン環をアルキル側鎖で置き換えても,それほど活性は低下しないが,もう一方のベンゼン環を同様アルキル鎖で置き換えると,活性がほとんどなくなることが明らかとなった.また,CoMFAの結果,ジベンソイルヒドラジン類の二つのカルボニル酸素原子は20-hydroxyecdysoneの20-および22-位のヒドロキシ酸素原子に対応している可能性の高いことが示唆された.さらに,定量的構造活性相関解析の結果得られた.活性発現にとって重要な立体電子的,および疎水性効果の意味については未だ明らかではないが,CoMFAで得られた立体的,電子的フィールドに関する情報は,レセプターのリガンド認識部位を予測するにあたって有効であるとともに,より高活性な新規化合物のデザインにも役立つものと考えている.また,化合物の中には若干の痙攣誘起活性を示すものも存在し,哺乳類に対する安全性にも注意を払う必要がある.
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