研究概要 |
アブシジン酸の受容体解析を目的として次の3項目にターゲットを絞ったアブシジン酸のアナログをプローブとして合成し、以下の結果を得た。 1)水酸基の役割。1'-デオキシ体ならびに1'-デオキシフルオロ体、8'-フルオロ体の活性より、1'位水酸基はプロトンドナーとして受容体と水素結合していること、代謝によって導入される8'位の水酸基は活性発現にほとんど関係していないことが判明した。 2)分子の対称性。対称性アナログならびにアルキル化アナログの活性より、アブシジン酸の擬似軸対称性仮説は概ね正しいことが判明した。(+)-8'と9'位アルキル体の活性低下が小さかったことから、8'位と9'位周辺には空間的余裕があることも判った。さらに、(-)-8'アルキル体の活性低下が著しかったことから、この仮説に基づいて、アブシジン酸の2're面は受容体と重要な相互作用をしていることが初めて明らかとなった。 3)活性コンフォメーション。5'α, 8'-と5'β、9'-シクロアブシジン酸、2'α, 3'α-と2'β, 3'β-メタノアブシジン酸の活性より、アブシジン酸の活性コンホメーションは、側鎖疑エカトリアルの半イス型ではなく、側鎖が疑アキシャルの半イス型に近いことが判明した。 以上の結果は、受容体単離用の光アフィニティーラベルアブシジン酸を合成するための知見も示唆している。すなわち、アブシジン酸への光反応性官能基の最も効果的な導入部位は、結合部位との距離が遠い6'位側よりも結合部位との距離が比較的近い2'、3'位のre面側であると推定される。しかし2重結合に官能基を追加することは困難なので、側鎖疑アキシャルの半イス型が安定コンホメーションとなる2'、3'-ジヒドロ体の2'α位側にジアゾ基を導入したアナログが最も妥当と考えられる。
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