研究概要 |
小腸のアミノペプチダーゼ活性は、高タンパク食摂取時に上昇することが知られている。本研究は、小腸上皮由来の株化細胞を用いて、この活性上昇機構を解明することを目的として遂行された。 小腸上皮細胞(IEC-6)の培養液に筋肉タンパク質のアクチナーゼ水解物(ペプチド)を添加して培養した結果、5日目以降の細胞増殖が、ペプチド無添加の場合に比べて促進されることが判明した。また、その時に細胞内アミノペプチダーゼの比活性も上昇することが明らかとなった。培養7日目でのAla-β-naphthylamide(Ala-NA)に対する比活性は、ペプチド無添加で培養した場合に比べて、約1.4倍に上昇した。次に、大量培養した細胞の抽出液をDEAE-celluloseカラム(10mM Tris-HCl緩衝液,pH7.2を使用)にかけ、アミノペプチダーゼを検索した結果、少なくとも5種類のアミノペプチダーゼの存在が明らかとなった。この内、0.133M NaClで溶出したアミノペプチダーゼの比活性が、ペプチド添加で培養した場合に著しく上昇することが判明した。 一方、小腸上皮細胞(IEC-18)の培養液に小麦グルテンのアクチナーゼ水解物(ペプチド)を添加して培養した場合には、細胞中のアミノペプチダーゼの比活性は、培養2〜3日目に上昇することが明らかとなった。その比活性は、ペプチド無添加で培養した場合に比べて、約1.5倍に上昇した。上記と同様に解析した結果、ペプチド添加で培養した場合に0.12M NaClで溶出したアミノペプチダーゼの比活性が著しく上昇することが判明した。このアミノペプチダーゼは、分子量が約100,000で、至適pHを6.5に有する金属酵素であるこが明らかとなった。 このように、本研究によりペプチド添加で活性上昇のもたらされるアミノペプチダーゼが特定され、その活性上昇機構を解明する端緒が拓かれたといえる。
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