研究概要 |
砂丘植物は、土壌の物理性および水分条件の不安定性・貧栄養、飛塩などにより生育特性を示す。砂の移動しやすい箇所でコウボウムギなど地下茎繁殖型の草本が優占していた。コウボウムギは、有性生殖による個体発生も認められたがその大部分は5〜6月乾燥により枯死し、分布しているほとんどの個体は無性生殖によると推察された。乾燥地植物は、土壌水分に関し適応性を持っているが砂丘植物も同様な順応を示し、灌水量を減らすと根長が長く相対的に深いところの根の分布量が多くなった。土壌の養分垂直分布は一般の森林におけるそれとは異なり養分により分布の仕方は異なっており、とくにCa,Mgなどの蓄積性のものと、P,Naなどの水溶性の物質に特性がみられた。砂丘クロマツ林における稚樹の動態調査の結果、多くの森林で種子の発芽にマイナスに働くA_0層の存在が逆に砂丘林では林床の水分環境の維持に作用し発生・定着を促進する事が明らかになった。砂丘クロマツは、林内のギャップなど適度のA_0層と明るさを伴ったところで更新するが、最近土壌養分条件が良いところはニセアカシアに取って代わりつつある。また殆どの砂丘のニセアカシアは、萌芽など無性生殖で更新しており、この点においても実生更新のクロマツに比べ有利で今後クロマツからニセアカシアに移行する砂丘クロマツ林が多くなると考えられる。日本の砂丘林は、海岸近くに分布しているため常に海からの飛塩にさらされている。そのため海岸植生とその成長・形態に飛塩量が大きく作用している。飛塩量は海岸線から300mまで急激に減少し以降内陸に向かうにつれ緩く減少する。森林内雨水中の塩分含有量は、林外雨の2倍以上で、飛塩の樹木による捕捉効果の大きさが明らかになった。普通クロマツの分岐比は5/本・年であるが砂丘クロマツは1〜2の間で小さく、海岸クロマツの枝数の少なさは枯損より枝分岐比が大きく影響していた。
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