研究概要 |
マツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウは日本ではマツノマダラカミキリとカラフトヒゲナガカミキリの成虫によって伝播される。伝播はカミキリの摂食箇所の傷と産卵箇所の傷を通して行われる。二つの伝播様式を組み込んだ材線虫病類の伝播モデルを作成し,実際のマツ林におけるセンチュウの伝播率を推定したところ,病原力のないニセマツノザイセンチュウは0.11(1993-1994年の結果)で,病原力がほぼ1.0のマツノザイセンチュウの0.0062より大きかった(1980-1983年の結果)。カラフトヒゲナガカミキリの配偶行動をと通して,ニセマツノザイセンチュウがカミキリ成虫間を移動できる事が実験的に示された。ニセマツノザイセンチュウの場合,カラフトヒゲナガカミキリ成虫の雄から雌への移動に比べて,雌から雄への移動は起こりにくいことが示された。さらに,カラフトヒゲナガカミキリ雄成虫から雌成虫に移動したニセマツノザイセンチュウが産卵箇所を通してマツに伝播される事が示された。カラフトヒゲナガカミキリ雌成虫から産卵箇所を通して伝播されたニセマツノザイセンチュウは,産卵箇所を中心とした半径0.75cmの樹皮内に少なくとも24時間留まる事が示された。ニセマツノザイセンチュウについて,カラフトヒゲナガカミキリ雌成虫の摂食箇所からの伝播数と産卵箇所からの伝播数を実験的に調べた。その結果,媒介昆虫の保持線虫数のうち平均17%が産卵箇所を通して,6%が摂食箇所を通して伝播されることが示された。同様な実験をマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの系で行ったところ,マツノザイセンチュウは媒介昆虫の産卵箇所からアカマツ丸太に伝播されることが実験室で確認された。次に,媒介昆虫の保持線虫数のうち平均3%が産卵箇所を通して,12%が摂食箇所を通して伝播されることが示された。
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