研究概要 |
屋久島におけるヤクタネゴヨウの分布,その林分の植生および構造を調査した結果,以下の生態的特性が明らかとなった。 ヤクタネゴヨウは標高900mまで分布し,これまでの報告より高い標高まで分布したことが確認され,さらに高い標高まで分布する可能性が指摘された。 ヤクタネゴヨウの分布地は,基岩が露出している急峻な尾根筋の崩壊跡地であり,ヤクタネゴヨウはツガ,スギおよびヒノキなどの針葉樹と高木層を構成し,その林冠下にはヤクシマシャクナゲやヤマモモなどの陽性樹種が特異的に出現した。このことから,ヤクタネゴヨウは,林冠層破壊や土壌流出などの撹乱後に一斉更新していることが推察された。 ヤクタネゴヨウは高木層や亜高木層に多く分布したが,低木層以下に後継樹の生育はみられなかった。このことから,ヤクタネゴヨウはその林分において遷移の進行に伴って衰退していく種と判定された。 ヤクタネゴヨウの種子は大型で翼が未発達であることから,その多くは母樹の樹冠下に多く散布されることが明らかとなった。 ヤクタネゴヨウの成熟胚を外植体として増殖培地を検討したところ,BAP1〜2ppmを添加したDCR培地とWS培地で良好な生育が認識された。
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