研究概要 |
大分県佐伯南郡,長崎県対馬,鹿児島県川内地方の民有広葉樹林に対する経営管理の経緯や現状及び将来の動向を現地調査と所有者に対するアンケートにより調査し、民有広葉樹林の保全と活用策について検討した。また,宮崎県内を中心に広葉樹材の利用動向に関する調査を行った。これらの地方で広葉樹林が残されてきた主な理由は労力不足や土地不良であり,パルプ材,シイタケ原木,薪炭材の生産などを主な目的として管理されてきた。伐採収穫は立木処分による販売や自家用目的が中心で,伐採木の主な用途はパルプ材,シイタケ原木,薪炭材であったが,用材としての利用もみられた。伐採方法は皆伐,伐採林齢は30年以下が最も多く,伐採跡地はほとんどの場合,天然更新にゆだねられてきた。所有する広葉樹林をこれからどうするかについては,多くの人が現在のまま広葉樹林として管理していくことを考えている。目標とする主な林相は,シイ・カシ類などの常緑広葉樹やコナラ・クヌギの天然林及びクヌギの人工林であるが,ケヤキの育成に関する関心も高い。経営管理目的はこれまでとほぼ同様である。また,今後の伐採収穫については多くの人が考えており,その時期としては5年以内,林齢は30年以下が多いが,31年以上を考えている人も増えている。一方,大半の人が広葉樹林は野生動植物保護などの面で自然環境保全と関わりがあり,広葉樹林の取り扱いに際しては配慮すべきと考えている。一方,広葉樹材の利用動向については,依然として一定の需要があるが,近年は漸減傾向にあることがわかった。以上から,これらの地域の民有広葉樹林については水資源涵養,林地保全などの面を考慮しながら,シイタケ原木やパルプ材などの供給の場として管理していくとともに,ケヤキなどの高い価値を持った有用広葉樹から成る用材林へ導いていくことが必要であると考えられた。
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