研究概要 |
樹木資源が保有する様々な抽出成分の生理活性の有効利用が注目されている。報告者もこの立場にたち、樹木のフェノール性抽出成分の抗酸化活性の研究を続けている。これまでに、80余の成分を試験に供し、抗酸化活性の強弱を比較、評価するとともに、化学構造と活性発現の関係についても考察した。今回は、上記検討において高い評価が得られたフラボノイドについて、厳密な抗酸化活性の比較とその化活性発現の反応機構の解明を研究の主目的とした。 まず、A及びB環の同じ位置に複数の水酸基をもつフラボノイド類の抗酸化能の厳密な強弱関係を示すことは従来の測定法ではできないので、これらを1, 1-ジフェニル-2-ピクリルヒラジカルと反応させ、その過程をストップドフロー法で追跡して強弱関係を明らかにすることにした。その結果、若干の問題はまだ残っているが、共に強い抗酸化活性をもつエリオジクチオール、クエルセチン、タキシホリン等の強弱関係をラジカル捕捉定数で具体的に示すことを可能とした。 次に、クエルセチンを検討化合物とし、まだ説明されていない芳香族化合物の抗酸化反応機構の解明を目指した。クエルセチンやその配糖体、ルチンを原料としてクエルセチンのメチル誘導体類を調製した。そして、これらのラジカル捕捉定数を測定し、活性の有無や強弱関係を具体的に示した。 フラボノイドの抗酸化反応機構解明検討では、手始めに、クエルセチンの炭素3位における水酸基から始まる反応の解明をめざした。反応基質に3-ヒドキシフラボン、3-メトキシフラボンを用い、2, 2'-アゾビス-(2, 4-ジメチルバレロニトリル)と反応させ、生成物を単離、精製し、各々の構造を決定した。また、これら生成物の経時的な消長も調べた。 以上から、フラボノール(クエルセチン)の3位水酸基から始まる抗酸化反応経路を提案した。
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