研究概要 |
濃酸-フェノール媒体系相分離処理プロセスを応用し,各種植物体の天然リグニンよりフェノール活性および機能の異なるリグニン素材(リグノフェノール誘導体)を合成するとともに,その生体物質に対するアフィニティーおよびその発現メカニズムを構造との相関において考究した。さらに生体機能素材としての活用に関し基礎的に検討を加えた。 活性フェノール系ネットワーク構造を有するリグノフェノール誘導体が,従来のリグニン試料に対し5〜100倍の高タンパク質吸着活性を発現していることを見出した。この機能発現には,側鎖導入フェノール核のフェノール活性およびその分子内配向が重要に寄与していること,最大アフィニティーはタンパク質の等電点付近で発現し,タンパク質の種類にほとんど影響されないこと,さらに形成された複合体は水系において安定である一方,非水系では完全に分離することを示し,安定かつ強固な複合体形成には両者間の疎水的相互作用が重要に関与していることを明らかにした。 リグノフェノール誘導体のタンパク質吸着活性は,側鎖導入フェノール核の選択,その2次的疎水性コントロトールにより制御可能であり,さらにリグニン芳香核のミグレーションを伴う分子の2次的再配列により,従来のリグニン試料に対し約70倍までその活性を増幅させ得ることを示した。 リグノフェノール誘導体に固定化された酵素は,遊離酵素に匹敵する活性と特性を保持していること,その特性がリグノフェノール誘導体の特異的酵素固定化形態(高分子量タンパク質へのリグノフェノール誘導体の疎水的吸着)に基づくことを明らかにした。 酵素の迅速かつ容易な固定化,その完全脱着特性から,バイオリアクターシステムにおけるリサイクル型酵素固定化担体としての活用を提案,その特性を既存の酵素固定化担体と比較,評価した。
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