研究概要 |
日本人は,木材を材料として高く評価しすぎであるという中国人留学生の疑問を基に,各種材料,特に木材が,生活環境が変わることによりどのように評価されるのかを知ることを目的として,本研究を計画した。2年間で得られた結果は以下の通りである。 (1)日本人と中国人で,道具,住宅などに用いる材料についての評価では,明らかな差異が生じた。材料に対するイメージの差異は,日頃の生活や習慣に影響されることを明確にした。 (2)カナダで行った調査では,木になじみの薄い国の中国人と同様の評価をしたのがメキシコ人であり,森林国のカナダ人は日本人と同じような評価を下した。木材への親しみは,やはり身の回りの環境に影響されることがこれらも明確となった。 (3)留学生など日本在住の中国人を対象にして調査した結果では,日頃よく目にする住宅内装材料に関しては,ほぼ日本人と同じ評価を下した。このことは,身の回りの環境が変化することにより,材料に対するイメージにも変化が生じることを明確にした。 (4)同じ材料を用い,北海道・神戸・鹿児島での官能検査を行った結果,ほとんどの項目について,同じ傾向が得られたが,乾湿感のみに大きな差異が認められた。これはそれらの地域における年間の雨量と相関が認めら,材料に対するイメージは,気候風土にも影響されると推察した。 (5)左右の手で,異なる材料を触った時,両者に温冷感や粗滑感に差があるほど,触った瞬間の脈拍が速くなる傾向が認められた。そこで,この傾向をより明確にするために,同じ材料で,一方を冷蔵庫に入れへ温度を下げ,温度差をつけた材料や,表面をサンドペ-パ-で粗くした材料からも確認することができた。 (6)最後に,各種の色紙を提示し,それを凝視している時の眼球運動および脈拍をポリグラフで測定した結果,眼球運動では,赤など暖色系の色ほど,電圧値が高く,緊張感を示す結果となった。それに対して,脈拍ではそれと若干異なった。しかし,目と心臓の動きを両者測定することにより,心理的な動きを物理的に捉えることの可能性を示唆していた。
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