研究概要 |
スギ黒心には,その形成に関与する要因の違いによって種々のタイプがある。この研究では,心材全体がほぼ一様に黒色となるタイプの黒心を対象に実験を行い、以下のような結果を得た。 1)赤心は弱酸性を,黒心は弱アルカリ性を示した。黒心がアルカリ性を示す理由として黒心には灰分(特にカリウム)が多いためと推測された。また,灰分量とカリウム量とも間には一次の相関関係が存在するが,回帰直線が原点を通らないので,灰分量が多いほど含まれるカリウム量の割合は増加した。 2)心材の明度は灰分(カリウム)量の影響を受け,心材のカリウム量がある限度を超えるとき,黒心が形成されると推測された。灰分量は品種によって異なり,さらに同一林分の品種内では胸高直径との間に正の相関関係が認められた。したがって,心材に取り込まれる灰分量は遺伝的な要因と肥大成長の良否に関係する環境要因ないしは立地条件によって決まると考えられた。 3)しかし,心材の灰分量は品種によって概ね決まっているので,遺伝的に灰分が少ない品種や逆に多い品種では,立地・環境要因は黒心形成の決定的要因にはならないと推測された。 4)湿潤な林分に高含水率材が多い傾向が認められ,環境要因との関連で黒心形成のしくみが明らかになりつつあるが,十分な解明には至らなかった。今後の緻密な実験計画のもとでの研究が期待される。黒心の発生を低減させるには,当面は黒心になりにくい品種を選択し造林するなどの対策が必要であろう。
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