研究概要 |
異質4倍性魚類を起源として進化したとされるフナ属魚類は遺伝標識となるアイソザイムの遺伝様式が複雑で、積分化や種内分化に関する総合的な解析が行われていない現状である。この問題の打開には雌雄一対交配実験による遺伝標識の遺伝様式の解明が必要となる。本研究はフナ属魚類の遺伝学的解析の基礎として、キンブナおよびキンギョを材料として簡便に用いることができる遺伝標識を選択し、交配実験によりその遺伝標識について遺伝様式を確証し、さらにその遺伝標識を用いて野生のキンブナとキンギョの諸品種の類縁関係をとらえることによってフナ属魚類の遺伝学的解析の基本を確立することを目的とした。その結果、(1)核内および核外DNAを標識とする場合にはPCR法の利用が有効と考えられたが、集団分析にはさらに簡便な分析条件の整備が必要と考えられた。(2)アイソザイムの検出はデンプンゲル電気泳動法によって10酵素で簡便かつ明確にバンドが検出できた。(3)ワキンおよびキンブナの交配実験によって10酵素を支配する26遺伝子座のうち21遺伝子座の遺伝様式が確証できた。(4)Gpi-2、Ldh-1,2,3,4遺伝子座の遺伝様式の確証にはさらに多くの交配組が必要であった。(5)21アイソザイム遺伝子を標識として調べた遺伝的変異性は天然キンブナで高かったが、強度の選択がなされてきたキンギョ6品種ともに固定されていないことが分かった。(6)天然キンブナ2集団とキンギョ6品種の遺伝的分化を調べたところ、キンギョは品種レベルのグループとなり、日本産天然キンブナとキンギョは亜種間の遺伝的分化程度を示した。(7)以上の結果から、フナ属魚類の遺伝学的解析には交配実験による遺伝様式の確証が有効であることが分かった。
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