研究概要 |
1.微生物機能を利用して,有機物で汚染された内湾の生物環境を改善するため,脱窒細菌,アンモニア酸化細菌および微細藻類からなる有用微生物系を構築して環境修復・窒素除去を試みた。 2.固定化脱窒細菌 Pseudomonas sp.Sc51 株を用いて、調整したモデル廃水および終末処理場廃水からの窒素除去を試みた結果、廃水中の硝酸塩・亜硝酸塩は速やかに減少し,窒素除去速度は調製モデル廃水の場合 90.8μmol/1/hr,終末処理場廃水の場合55μmol/1/hr であった。 3.微弱光のもとで光合成能を有する微細藻類を酸素生産者として利用した。現場海水・底泥に微細藻類P-1株を添加した系では、藻類による酸素生産が底泥による酸素消費を上回った。現場海底を想定した微弱条件で,分離した微細藻類による酸素条件改善の可能性が示唆された。 4.脱窒細菌が周辺に生息する生物に及ぼす影響を検討するため,他種細菌・他種プランクトンとの共存条件下における挙動を調べた結果、Bacillus,Alteromonas,Gymnodinium mikimotoi,Skeletonema costatumおよびHeterosigma akashiwoなどは脱窒細菌の共存下ではほとんど影響を受けていないように思われた。また,脱窒細菌の変異原性についてはAmes試験陰性と判定された。 5.有用微生物の大量保存の方法を検討した結果,凍結乾燥処理によりかなりの細胞が死滅するものの,凍結乾燥細胞は-30℃にて長期間生残した。また,細菌細胞は20%グリセリン中で-30℃にて長期間生残した。しかし,低温保存の場合,細菌細胞は保存日数の経過とともに生菌数が低下した。 6.微生物散布による現場環境改善試験の結果,有機物分解量は冬季で26.4g/m^2/日,夏季で81.1g/m^2/日となり,底泥表層における脱窒による窒素除去量は冬季で30.7mgN/m^2,夏季で59.4mgN/m^2/日となり,微生物による環境改善効果が認められた。
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