研究概要 |
【目的】トラフグの卵成熟誘起ホルモン(MIH)を同定した。【方法】卵巣成熟度の異なる雌親魚から得た卵巣組織200mgに、[_<14>C]-17α-ヒドロキシフロゲステロン(17α-P,10^6cpm)を前駆体として加え16℃で2時間培養し、卵濾胞組織で合成されたステロイドをTLCで分離し、再結晶法で各代謝産物を同定した。それらの中で、卵成熟期に合成量が増大する17α,20β,-ジヒドロキシ-4-フ レグネン-3-オン(17,20β-P)、11-デオキシコーチゾル(S)、および17α,20β,21-トリヒドロキシ-4-フ レグネン-3-オン(20β-S)のin vitroにおける卵成熟誘起活性を比較した。また、各発達段階にある卵巣組織30mgを非標識の17α-P、S、あるいは17,20β-P100ng/mlとともに培養し、培養液中の各種ステロイドの濃度をELISAにより測定し、卵成熟に伴う各ステロイド代謝酵素の活性比較を行った。さらに卵黄形成直後の雌に20β-S(2mg/kg)を注射し成熟するか否かを調べた。【結果】卵成熟時に合成されるステロイドホルモンのin vitroにおける卵成熟誘起活性を調べた結果、20β-S(10ng/ml)は培養開始後36時間で40%、48時間で83%の卵を成熟させた。17,20β-P(10ng/ml)は培養開始後36時間で3%、48時間で10%の卵の成熟を誘起し、Sには卵成熟誘起活性は認められなかった。TLCおよび非標識の前駆体代謝実験より、トラフグの卵濾胞組織では21-ヒドロキシラーゼ活性が常に強く、卵黄形成期は17α-Pを大量のSに転換し、卵黄形成後20β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(20β-HSD)の活性が急激に増大し、Sを20β-Sに転換させていた。20β-Sの親魚への直接投与による成熟実験の結果、20β-Sを投与した5尾中4尾が成熟、排卵した。一方対照区5尾はすべて成熟しなかった。以上の結果より、トラフグの真のMIHは20β-Sで、主としてS経路で20β-HSDにより合成されることが明らかとなった。
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