研究概要 |
96穴マイクロタイタ-プレートと固層化第2抗体を用いた酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay, ELISA)を,魚類の卵成熟誘起ステロイドの一種である17α,20β,21-trihy-droxy-4-pregnen-3-one(20β-S)について試作した.抗原の標識にはhorse radish peroxidaseを用い,ステロイドのハプテン化,及び酵素との結合にはコハク酸カルボジイミド法を用いた.試作した測定系を検討した結果,本測定系は従来用いられてきた放射免疫測定法(RIA)とほぼ同程度の感度および精度を持つことが明らかとなった.本法は安全性や迅速性などの面でも利点をもつため,充分,RIAに置き換わりうると考えられる.20β-Sと同様に魚類の卵成熟誘起ステロイドである17α,20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one,)魚類の副腎皮質ホルモンであるコルチゾル,魚類の雄性ホルモンである11-ketotestosteroneについてもほぼ測定系が完成し,現在,有効性の検定を行っている.今後,魚類生殖系解析に関連したさまざまな研究に応用していく予定である. ある種の魚類では卵成熟時に生殖腺の5β-reductase活性が上昇することがわかっているが,その結果産生される5β-還元体のステロイドは,その生理活性に不明の点が多い.5β-還元体の一種である5β-pregnane-3-17-dioneについてもELISA測定系を試作し,一応,測定可能となった.しかしながら,ステロイドの構造上の問題から抗体の特異性が低く,17α-hydoroxyprogesteroneと50%近く交差することがわかった.17α-hydoroxyprogesteroneは魚類血中にかなりの濃度で存在するため測定には前もって高速液クロなどで5β-pregnane-3-17-dioneを分離する必要があり,より特異性の高い抗体ができないか目下検討中である.
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