研究概要 |
魚類の行動や生理機能は,生物時計から発信される時刻情報によって1日周期のリズムを示すと考えられている.本研究は,魚類の自発摂餌リズムと,時刻告知ホルモンであるメラトニンの分泌リズムの特性を調べ,生物時計との関わりを明らかにした. 1.行動学的研究:自発摂餌がマダイ,キンギョ,サクラマスの飼育に有効であるか検討し,同時に摂餌と行動を同時記録して日周リズムや生物時計との関わりについて調べた.その結果,(1)上記3魚種は個体の場合でも群の場合でも容易に自発摂餌を学習することができ,学習後は自発摂餌のみで長期に飼育することが可能であった.(2)自発摂餌と制限給餌の比較実験ではいずれも自発摂餌で好成長が得られたが,なかでもキンギョの成長率は極めて高かった.(3)恒常条件下では摂餌活動も遊泳行動もサーカディアンリズムを示したことから,両リズムとも生物時計の支配を受けていることが明らかとなった. 2.内分泌学的研究:魚類では複数の生物時計がサーカディアンシステムを形成していると考えられている.しかし,生物時計の局在や生理機能との関わりはまだよく分かっていない.本研究では,キンギョとヨーロッパスズキのメラトニンの分泌リズムを計測し,生物時計の局在について検討した.その結果,(1)キンギョの眼球には生物時計の存在することが判明した.(2)サクラマスの松果体,ヨーロッパ産スズキの松果体と眼球ではメラトニン分泌を制御する生物時計の確証が得られなかった.(3)ヨーロッパ産スズキの眼球内メラトニン含量は通常とは逆転した日周リズムを示し,暗期の急性光照射でも特異な反応を示した.(4)キンギョの脳内メラトニン受容体はG蛋白質とcouplingしていること,また受容体の日周リズムが松果体由来のメラトニンによるdown regulationにより形成されていることが明らかとなった. 以上の成果の詳細は,学会誌等の論文で述べている.
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