研究概要 |
フグ体内におけるフグ毒の存在の様子や役割の解明に資することを目的に,有毒フグ肝臓を用いて遠心分離による細胞分画を行い,オルガネラでのフグ毒の分布を明らかにした。まず,研究初年度(平成7年度)は肝臓をホモジナイズ,細胞分画する際の最適条件を確立し,毒性の高いヒガンフグ肝臓細胞中での毒の分布を調べた。この結果を基に,平成8年度はフグの種類や肝臓毒性により肝細胞内におけるフグ毒分布に相違があるかを調べるとともに,分画された各オルガネラの毒成分分析を行った。フグの種類による差を調べるためにヒガンフグ,ショウサイフグ,マフグの3種を用いた。また,毒性による差をみるためには魚種をショウサイフグに限定し,猛毒(1560MU/g),強毒(690MU/g),弱毒(59MU/g)の肝臓試料を用いた。しかし,毒の分布に魚種による違いは認められず,いずれの魚種においても可容性画分に毒のほとんど(80%以上)が回収され,ミクロソーム画分の毒量が常に低く全体の1〜2%程度であった。残りは核画分,ミトコンドリア画分,細胞オルガネラではないが血球画分に3分されていた。また,肝臓の毒性が大きく異なる場合にもほぼ同様な傾向がみられたことから,フグの種類や毒性にかかわらず,肝細胞中ではフグ毒は主に可溶性画分に存在することが明らかになった。 次に,オルガネラの毒成分を調べた。各画分の酢酸抽出液を調整し,GC-MS,HPLC,LC-FABMS分析を行った。いずれの画分もテトロドトキシン(TTX)が主成分として検出された。また,可溶性画分を酢酸抽出を行わずそのまま分析してもTTXが検出されたことから,フグ肝細胞中のフグ毒は,主に可溶性画分(細胞質基質)にTTXとして分布していることが判明した。
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