研究概要 |
わが国の食肉工場(と畜場・部分肉製造工場)は,欧米先進国と比較して,規模が小さく,生産性が低く,衛生状態も悪いところが多い。本研究は,こうしたわが国食肉工場の現状に鑑み,岩手・鹿児島両県の産地食肉工場を対象として,豚処理部門における低生産性の数量把握,原因究明を図るとともに,西欧の食肉処理システムとの比較,日本の自動処理システムの提示などを行い,今後の改善方向を示すことを目的としている。 とくに本研究では,両工場におけると畜ライン,部分肉製造ラインの1頭当たり処理コストの算出に多大な努力を傾注している。学会レベルにおいてこうした研究が乏しい現状では,ここでの成果は画期的なものとなるであろう。とくに調査対象工場はわが国を代表する食肉工場であり,そこでのコスト計算がなされたことは,学会はもとより,産業界,官界に与える影響も大きいものと思われる。 本研究で明らかとなった主要な論点は次の通りである。 (1)現状は1日数時間しかラインが動いておらず,稼働率に問題がある。この稼働時間は西欧の半分でしかない。 (2)その原因は,集荷能力のみならず,食肉衛生検査体制にも問題があって,食肉工場だけの努力では解決がつかない。行政の前向きの対応が必要である。 (3)施設の設置後すでに30年近くを経過し,当時の最新技術が今日では旧式になっている。このためラインがきわめて労働集約的であり,これがコスト増をもたらす主要な原因である。 (4)ラインの部分的改良では生産性向上は見込めない。施設の全面改修,機械の総入替えが要請されるが,これには多大な投資を必要とするという困難性が伴う。
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